
25日午前8時半頃、熊本城・市役所前電停に停車中の熊本市電に別の熊本市電車両(同路線)が追突する事故があり、7人が病院に搬送されました。
追突した熊本市電の運転士は市交通局の聞き取りに対して「ブレーキがきかなかった」と話しているということです。
熊本市電は過去にも重大インシデントや事故が多発していることで有名です。
なぜ事故が多発してしまうのか、解説していきます。
・なぜ事故が多発するのかを解説
・この問題に解決策はあるのか?
過去の事故事例
熊本市電は大事故に繋がりかねない重大なインシデントが多く、2024年の全国で発生した重大インシデント4件のうち、3件は熊本市電でした。
2024年1月5日
停留所を出発する際にドアが開いたまま走行してしまった。
2024年2月3日
走行中にドアが開き、車両が停止した。
2024年9月2日
停留所を出発した直後にドアが開き、緊急停止した。
いずれも負傷者はなかったが、いずれも危険性の高い事例であることには間違いない。
熊本市電では、これら3件以外にも信号の見落としや脱線など、重大な事故につながりかねない事例が相次いで発生しており、2024年9月には、九州運輸局から改善指示が出される事態となっていた。
熊本市電はなぜ事故が多発するのか?
なぜ事故が多発しているのか、調べるとそこには数多くの原因が散りばめられていました。
深刻な運転士不足
・運転士の多くが「会計年度任用職員(非正規雇用)」として1年契約で雇用されており、将来への不安や低賃金が退職者増加を招いています。
・2023年度には運転士が86人から76人に減少し、深刻な人手不足となりました。
劣悪な運営体制
・上熊本車両工場に所属する運転士への2023年の教育実施計画が策定されておらず教育が行われていなかった。
・2023年に実施した知識及び技能の確認で技能の結果が基準に達していない運転手に電車を運転させていた。
・視力検査が基準に達していない運転手に電車を運転させていた。
・点呼を実施していないのに点呼の記録が記入されていた。
過酷な労働環境
・夜間勤務が23時40分に終了した後、8時間以内に次の勤務が始まるケースもあり、十分な休息が取れない状況です。
・日中は10分程度しか休憩が取れず、心身への負担が大きい。
・時間外勤務を断りづらい雰囲気や突然の勤務要請など、心理的なストレスも深刻です。
これらの問題は運転士のヒューマンエラーや安全性低下に直結しており、早急な改善が求められています。
設備の老朽化
レール幅の異常や装置の誤作動など、長年の経営難による設備投資不足が影響しています。
レール幅の異常
2024年12月31日の脱線事故で、熊本城・市役所前電停付近のレール幅が基準値を26ミリ超えていることが判明しました。
この区間は施工から40年が経過しており、経年劣化が原因とされています。
装置の誤作動
車両や軌道設備の整備が遅れており、IC部品の入手困難なども影響しています。
脱線事故や運行停止が相次ぎ、利用者に大きな影響を与えています。九州運輸局から行政指導を受ける事態となりました。
一部区間で運休が続き、上下線とも折り返し運行を余儀なくされています。
経営改善を優先した結果、設備投資が遅れたことが指摘されており、計画的な更新が求められています。
複雑な交通環境
市街地での混雑や交通量の多いエリアで運行されているため、運転士への負担が大きい。
市街地の混雑
・熊本市は慢性的な交通渋滞が発生しており、政令指定都市の中で渋滞ワースト1位とされています。
・特に市電が走行する「電車通り」周辺では、自動車やバス、自転車、歩行者が入り混じるため、運転士は多くの注意を払う必要があります。
交通量の多さ
・熊本市内では自家用車利用率が61.2%と非常に高く、公共交通利用率はわずか4.9%と低いことから、市街地の道路には車両が集中しています。
・市電沿線地域(例: 国府~市立体育館前)では、夜間でも車両速度が上がりやすく、事故リスクが高まっています。
運転士への負担
・市電は他の交通手段と並走するため、信号や交差点での確認作業が多く、運転士に大きな精神的負担を与えています。
・繁忙時間帯には電停で乗客の大行列も見られ、運転士は安全確認と時間厳守を両立しなければならず、プレッシャーが増しています。
これらの要因により、市街地での運行は複雑化し、安全管理へのさらなる対策が求められています。
熊本市電問題は解決できるのか?
熊本市交通局は改善策として検証委員会を設置し、運転士への個別面談や手順再確認を進めていますが、根本的な改善には時間を要する状況です。ですが具体的な対策として以下の内容が発表されました。
1. ダイヤ改正と減便
2024年6月に運行本数を最大15%削減し、運転士の負担軽減を図りました。
2025年4月からは運転士育成の進展を受け、最終便の時間を繰り下げる形で若干の増便を実施予定です。
2. 労働環境改善
運転士の給与を約100万円引き上げ、平均年収を384万円から480万円に改善。扶養手当や住居手当も新設し、 人材確保と待遇改善を図っています。
運転士不足解消に向け、随時採用や育成プログラムを強化し、2025年度以降に新たな運転士が乗務可能となる予定です。
3. 安全教育の強化
信号確認やポイント確認など基本的な運転ルールの徹底と、安全意識向上のための集合研修や個別研修を実施。
管理職による始業点呼への立ち会いや意見聴取で、現場の声を反映する取り組みも進めています。
設備に関しては熊本市交通局は基準値を超えたレール幅の補修工事を行なったとのことです。
まとめ
今回、重大インシデント多発で大事故を招きかねないと懸念されていた最中、車両同士の衝突という大事故が発生。
起こるべくして、起こったのかもしれません。怪我人の詳細はわかっていませんが、2度と発生しないように再発防止策を練ってほしいですね。
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